2022.09.14

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分岐、古本の記憶、失った辞め時

自分の行いを褒める。自分の環境を呪う。出発点となる出来事は同じでも、自分がどう選択するかで、辿り着く場所は全く違ったものになるように思う。可能な限り僕は前者の方を選び続けていたい。 ベッドに横になり、サイドテーブルに積んである古本を読む。腕が疲れたので本を開いたまま顔に乗せ、目を瞑る。知らないお家の […]

2022.07.24

// 3-6

パレイドリア、アポフェニア

冷蔵庫の奥で、使われないままずっと息を潜めているブルーベリージャム。固くなってしまった瓶の蓋はきちんと開いてくれるだろうか。道路の上では車に轢かれて砕け散った、蟻駆除剤のプラスチック容器がキラキラと輝いている。何か異物を絡めとったまま、カタカタと規則正しいリズムで回り続ける室外機のファン。昨日刻んだ […]

2022.05.18

// 3-6

急遽、寄せ集めの緑

花瓶に挿していた植物から、いつのまにか真っ白な根が生えていた。葉っぱが枯れ始めていたので本当は捨てるつもりだったが、根を伸ばしてまで生きようとしている植物を無下にすることに後ろめたさを感じたので、花瓶から植物を取り出して別の容器に移し替えた。最近は気に入った容器があると、ラベルを剥がして綺麗に洗い、 […]

2022.05.11

// 3-6

いまは儚く、あすは彼岸

冷めた鉄を打ち続け、手には血が滲んでいる。なぜ、鉄を打っているのか、その理由はとうに失われ、ただ打ち続けるという行為だけが、自身の生の支えとなっている。白く濁った両目を使い、打つ鉄の芯一点を見定める。叩くたび、不快な音が六畳一間に鳴り響く。叩けど叩けど鉄は変わらずかたちを留め、変わっていくのは我が身 […]

2022.05.08

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ブラック企業勤務社畜が中華鍋とお玉を抱えて異世界転生しちゃったので、ここで炒飯専門店としてどうにか生...

仕事から疲れて帰った僕は、冷蔵庫に放置された食材を使って炒飯を作った。仕事も上手くいかず、自慢できることが何もない僕だが、昔から唯一炒飯を作ることだけは得意だった。高校生の頃、母に炒飯を作ってあげたらとても喜ばれたことを思い出しながら、独り薄暗い部屋で炒飯を口に運ぶ。ささやかな満腹感が心地よい眠気を […]

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