卵の殻

霰が、けたたましい音を立てながら家中を叩いている。

孤独は、癒やすものでも埋めるものでもなく、向き合うものだと語ったのは誰だったか。不幸は、病めるものでも悔いるものでもなく、付き合うものだと語ったのは誰だったか。そんなことを考えながら卵を割ってフライパンに落とすと、小さな殻も一緒に落ちた。箸では上手く掴むことができず、諦めてそのまま目玉焼きを作った。一通り食べ終わり、食器を片付けながら、そういえばと思う。食べている最中、すっかり殻のことを忘れ、気づかないうちに、他の食べ物と一緒に胃の中へと押し込んでしまっていた。喉元すぎればなんとやら。ひとたび胃の中に入ってしまえば卵の殻は分解され、カルシウムとして摂取されるらしい。おお、なんと人体の逞しきこと。台所でスマホを眺めながら、ひとりごちた。

気づくと霰の叩く音が止んでおり、家中がしんと静まり返っている。もしやと思い、恐る恐る外を覗くと、霰は雪へと変わっていた。冬の静寂に雪の気配を重ねるようになったのは、いつからだったか。北陸の冬の空は重く暗く、お世辞にも美しいとは言えないが、僕の心は今、浮足立っている。

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