D君

なんとなく作ったこの子。この子を取り巻く世界のことを時々考えたりする。

傍田舎の港町に住み着いており、若者はどんどんこの町を離れ今は高齢化がかなり進んでいる。文字通り、ある日降って湧いたこの子を可愛がり、ときに助けてくれるおじいちゃんおばあちゃん、おじさんおばさんが住んでいる港町。ぼけたおばあちゃんは、D君を死んだ孫と勘違いし愛情を注ぐ。D君には愛が何か分からなかったが、このおばあちゃんを大切にしなくてはいけないと、強くおもう。「独り身の自分には多すぎる」と、あまった魚をいつも分けてくれる漁師のおじさん。壊れた男性用の腕時計をいつも大事そうに身につけている、美容室のおばさん。D君がやってくる数年前。この町には大きな悲しみが押し寄せ、たくさんのものやひとを奪っていった。D君はそのことを、まだ知らない。D君には、それが悲しいことなのかどうかも、きっとまだ、理解することができない。D君が降って湧いたその日から、止まったままだった町の時間が、少しずつ進みはじめる。

そういうお話を、だれか書いてください。

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