今号限り不扱い

欲しい雑誌があったのでamazonで頼んだ。が、届くのを待っていられなかったので本屋さんへ。我ながらバカ。店員さんに在庫検索端末を教えてもらい、端末で検索をかけると<今号限り不扱い>と表示された。取り扱い店舗を調べておけば良かったのにね。我ながらバカ。久しぶりの本屋さんだったので、じっくりと各コーナーを見て回る。手に抱える本がどんどん増える。店員さんが気を遣って「お預かりしましょうか?」と声をかけてくれた。「ああ!いえいえ!ごめんなさい!大丈夫です!」と挙動不審に答える。本の重さを感じながら物色できることが、本屋の醍醐味だと思っている。雑誌一冊を探しに来たはずなのに、気がつくと書籍を6冊も購入していた。今回買った6冊のうち、元々買うつもりだったものは一冊もない。それがとても嬉しく感じる。帰りの道中、川にかかった橋の手前の交差点で、選挙立候補者が行き交う車に対して手を振っていた。「ありがとうございます。ありがとうございます」と屈託のない笑顔で手を振っていた。けれど、その視線は誰も捉えてはいなかった。そして行き交う人たち誰も、立候補者に視線を向けてはいなかった。交差点のど真ん中に無意味に積み上がっていく「ありがとう」の言葉がもし目に見えるとしたら、今どれくらいの高さなんだろうかと考える。誰にも宛てられない言葉は、人を虚しくさせる。信号待ちの停車中、自分が吐いたアイコスの煙が視界の立候補者の姿に重なり、何事もなかったかのように消えてなくなった。

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