めまい

『リバーズ・エッジ』の山田が、川辺の草むらに転がっている死体を見ることで希望を感じるように。『トレジャーハンター・クミコ』のクミコが、映画「ファーゴ」の中で埋められた大金が実在すると信じ、全てを捨てて大金探しに現地へと向かったように。自己を自己足らしめるための媒介とするもの。あるいは自分につけられた印象を、偏見を、関係を、役割を、情愛を一つずつ引き剥がした後に残るもの。熱く焼けた砂が頬を打ち、皮膚は爛れ、目は白く濁っている。キバナノコギリソウが生い茂る谷を抜け、タールが湧き出る沼を渡り、やっとここまで来たというのに。イソバイドを駅の便所で汲んだ水に混ぜて飲む。人目を盗んでイソソルビドを昼食代わりに胃に押し込む。自分探しの旅から戻った彼は、旅先に自分を置いて帰ってきた。七色の空、光る湖、街、人。色に溢れた世界の話。ポケットに忍ばせていたイソバイドを強く握りしめる。自己を自己足らしめるための媒介とするもの。陽炎のようにぐにゃぐにゃと揺れ回る視界。僕は知っている。夢から抜け出す方法を。夢から抜け出て目覚める方法を。それはなんだったか。夢の中ではあんなにはっきりと思い出せたのに。

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