/ 2022.03.21 /
3-6 /
Insipid
枯れかけの草花がもつ独特の色気。錆びかけのカミソリが一番よく切れると、誰かが歌っていた。書きかけの謝罪文はネットから拾ってきたテンプレートを継ぎ接ぎして拵えた紛い物だ。宛名は未だ”○○○”のまま、テキストカーソルが文字の入力を待って、チカチカと明滅している。まだ小さかった頃、誰かに謝るときは心を込めて謝りなさいと教わった。けれど、大人になるにつれ、謝罪に必要なのは心を殺すことだと学んだ。求められているのは、誠意ではなく政治なのだ。飲みかけのコーヒーが視界の端で湯気を立てている。熱は静かに、そして確実に失われていく。スピーカーからはRadioheadの『Let Down』が流れている。
Let down
Let down
Let downYou know, you know where you are with
You know where you are with
Floor collapsing, falling
Bouncing back and one day,I am gonna grow wings
Radiohead – Let Down
パソコンの電源を落とし家を出る。今日は何を食べようか。