Insipid

枯れかけの草花がもつ独特の色気。錆びかけのカミソリが一番よく切れると、誰かが歌っていた。書きかけの謝罪文はネットから拾ってきたテンプレートを継ぎ接ぎして拵えた紛い物だ。宛名は未だ”○○○”のまま、テキストカーソルが文字の入力を待って、チカチカと明滅している。まだ小さかった頃、誰かに謝るときは心を込めて謝りなさいと教わった。けれど、大人になるにつれ、謝罪に必要なのは心を殺すことだと学んだ。求められているのは、誠意ではなく政治なのだ。飲みかけのコーヒーが視界の端で湯気を立てている。熱は静かに、そして確実に失われていく。スピーカーからはRadioheadの『Let Down』が流れている。

Let down
Let down
Let down

You know, you know where you are with
You know where you are with
Floor collapsing, falling
Bouncing back and one day,

I am gonna grow wings

Radiohead – Let Down

パソコンの電源を落とし家を出る。今日は何を食べようか。

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