絨毯の花

小さい頃に読んだ絵本を今でも時折思い出すことがある。その内容はとてもシンプルで、主人公は植物の種を庭に植える。すると、その種はすぐに芽吹いてすくすくと育ち、やがて丸めた絨毯状の花を咲かす。その花は絨毯を転がしたときのように空の上で転がり続け、1本の道を作っていく。そして、主人公の子供はその上を歩いて世界中を旅する。そういう内容だったように思う。不意にそのことを考えては、なんとかタイトルを思い出そうとしてみるが、思い出せたためしはない。ずっと好きで、ずっと忘れられず、そしてずっと思い出せない自分にとってとても大切なお話だ。

もし、自分が出版社側の人間だったとして「育った植物が絨毯で、その絨毯が転がりながら空に道を作って、その上を歩きながら世界中を旅するんです。」なんてことを作家に言われたらどう思うだろうか。きっと、無茶苦茶な話だと思うだろう。もっと起承転結を意識しつつ、今の子達に刺さるような内容を取り入れた方がいいなんて、それっぽいことを指摘したりするのだろうか。

理屈ではなく、素直に自分が良いと思ったものを作り、それをみた誰かが理屈抜きで良いと感じる。そういうこともあるんだということを、忘れないようにしたい。

p.s. タイトルの画像は、最近観た山田孝之のドキュメンタリー映画 『No pain,No gain』の劇中で、休憩中の山田孝之の膝に急に野良猫が乗ってきてくつろぎはじめた時の画像です。

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