現実投企

また、夏目友人帳を一期から一気に観直している。この作品に触れるたび、心の中に気持ちの良い風が吹き込んでくる。きっと窓が開いているのだろう。窓を閉めてカーテンを閉じ、一人部屋に閉じこもっていると、次第に外との繋がりが希薄になる。それはもちろん人と人との繋がりを含んではいるのだけれど、それよりもなによりも世界とつながっているという感覚だ。あっという間に外は温かく、桜も気付けば八分咲き、鳥たちもいつの間にか新学期を迎えクラス替えとなり、顔ぶれが以前とは異なっていた。部屋に差す日の光の角度、日が昇り沈むその時間、遠方の山々の残雪、全てが日々少しずつ変わっていく。変わっていく世界に自らを投企する。お寺の門の脇にひっそりと、木で組まれたベンチがあった。そこはこの瞬間、最も気持ちの良い日が当たる場所で、カメムシや蜂達が静かに日向ぼっこをしていた。

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