mikikurota architects の Fruits Sack

今年の春先、初めて雪のある涸沢を登った際に、今までで最大の疲労感に襲われた。

ことの原因は、全て自分の未熟さ故だった。

朝食をほとんどまともに取らず出発したこと。
見栄を張って先行しようとし、自分のペースを維持できず一気に体力を消耗したこと。
寒いし喉はそうそう乾かないだろうと高をくくり、持参する水をいつもよりも少なめにしたこと。

一歩足を踏み出す、たったこれだけのことが、
とても途方もない作業のように思えた。

そんな時に、なんとか自分を涸沢ヒュッテまで連れて行ってくれたのは、
義理の父が出発前に持たせてくれた1つのリンゴだった。

雪の斜面を登っている最中、とにかく水分が恋しくてしょうがなく、
ザックのポケットからリンゴを引っ張り出して周りが引くようなスピードで貪り食った。
リンゴの芯すら食べたのは後にも先にもこの時だけだと思う。

それからというもの、
リンゴを1つ持ち歩くということは僕にとって、ある種のお守りとなった。

◇ ◇ ◇

mikikurota architects が作る Apple Sack を見つけた時、
それはもう一目惚れに近かった。
リンゴが1つだけすっぽりと収まる、リンゴのためだけのサック。

ULに心酔し、軽さだけを追い求めていた自分に、
“自分にとって大切なものは何か”という気持ちを思い出させてくれる、
掛け替えのない道具となった。