まだ、小学生の頃。両親が共働きだった僕は、日中家に家族が誰もいなかったので、いつも首から家の鍵をぶらさげて登下校をしていた。すぐに物を無くしてばかりいる僕をみかねて、母が鍵に紐を通してネックレスにしくれたのだった。

学校から家に帰り玄関の鍵を開けるときに、シャツの中に手を突っ込み、首にかかった紐をたぐり、ガサゴソと家の鍵を取り出すと、それは自分の体温でほんのりと温かくなっていた。たったそれだけのことなのだけど、そのことが、ひとりぼっちの心細さをほんの少しだけ慰めてくれたのを今でも覚えている。

最近、ちょっとしたお出かけの際は、サコッシュではなく「FlipBelt 」というウエストポーチを愛用している。ウエストポーチといっても、従来のファスナーがついていて腰の後ろでとめるタイプのものではなく、柔らかい伸縮素材でできた腹巻きのような形をしている。普段は、スマートフォン、マネークリップ、そして家の鍵をこのポーチにつっこみ、ベルト代わりに腰に巻いて出かけている。程よい伸縮性とコンパクトさのおかげで、身につけるポケットのような感覚で使うことができる。

先日、仕事を終えて家戻り、玄関を開けようと「FlipBelt」の中に手を突っ込み、家の鍵を取り出したとき、ほんのりと温かくなっていることに気がついた。その時、ふいに小学生の頃の出来事を思い出したのだった。

今でも、物をすぐに無くしてしまう癖は相変わらずだが、外出する際は、母が作ってくれた鍵ひものように「FlipBelt」を身につけて出かけたい思う。

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