車を洗う

車を綺麗に洗った。普段よりも一つ上の高いコースで入念に。それでも洗い落とせない汚れが残った。そして、洗い染みがうっすらと車のボディに浮き上がった。徹底的に綺麗にしすぎてもなんだかこなれていないし、かといって洗わずにいると黒い車体なので小汚さが目立ってしまう。全く加減が難しいなと思う。車好きだった父は、休日になるとよく洗車をしていた。物珍しそうに近寄ると、きまってホースで水をかけられた。普段あまり遊んではくれなかったし、けっして会話も多い方ではなかったが、洗車にちょっかいを出しているときだけは特別で、それが僕と父との数少ないコミュニケーションだった。偶然にも父が好きだったHONDAの車に、僕も今は乗っている。父がこの車をみたらなんというだろうか。そんなことを考えていたら、洗車機のランプが赤から青へと変わった。

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