草叢の逆襲

夜、歩き慣れた道を歩く。昼には感じなかった、草木の強い匂いがあたりに立ち込めている。雨が降っているからだろうか。鳥や獣の気配はなく、ただ草木たちだけが昼と変わらぬ姿を保ったまま、そこかしこに立っている。今まで背景にしか過ぎなかったものたちが、認知の界面から一斉に這い出してくる。もしかすると、草木は昼眠り、夜動き出すのかもしれない。写真を数枚撮り、逃げ出すようにその場を去った。

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