ドライブ・マイ・カー

自分にとっての大人の定義とは、仕事ができるでもなく、お金を稼いでるでもなく、頼りがいがあるでもなく、何よりも自分の機嫌を自分でとれることだと思っている。裏を返すと自分の機嫌を間接的であれ直接的であれ周囲の人間にとらせてしまうことは、正直大人げないなと思ってしまう。

というわけで、海に行ってきた。石川県は能登半島に位置するので周囲が海に囲まれており、車を走らせれば自宅から20分程度で海に着く。海に向かう道中、セブンイレブンに立ち寄りカフェオレを買う。激アマなやつ。基本、ブラックコーヒーしか飲まないので、普段とは少し気分を変えたかった。浜辺にはポツポツと車が停まっており、皆、思い思いの時間を過ごしているようだ。僕はいそいそとレコーダーとグランドシートを取り出し、浜辺に座ってずっと海の音を録っていた。ぼうっと海を眺めながら、先日徹夜明けに観た、スペースX クルードラゴンの地球帰還LIVE中継を思い出していた。ロケットペンシルのペン先のような形状をしたクルードラゴン(地球帰還用カプセル)が、宇宙の地球軌道上にある前哨基地から地球へと帰還するというミッションだ。クルードラゴンはその機体を赤く発熱させながら、大気圏をなんとか通過していく。パラシュートを広げながらゆっくりと空を降下し、無事海へと着水。管制室では何度も拍手が巻き起こり、画面には “CREW-4 SPLASHES DOWN BACK ON EARTH” と、テロップが大きく表示されていた。

1時間くらい浜辺に座っていただろうか。今眺めている目の前の海に繋がる果ての果てのどこかの海に、クルードラゴンが着水したんだと思うと、不思議な気持ちになった。火星の大地では今この瞬間も強い風が吹き、遥か遠くの木星では、地球サイズの台風がうねりをあげている。まったく想像もできないほどの規模感に、少しだけめまいがした。

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