憧憬のポエジア

早朝、のそのそと布団から這い出て湯を沸かす。
外はまだ薄暗く、雪が降るか降らないかはっきりとしない雲が、はっきりとしない色のまま、薄っすらと空を覆っている。ぼんやりとした顔でマグカップに口をつける。カフェイン中毒の僕が、いまさらモーニングコーヒーを飲んだところで朝の憂鬱が綺麗サッパリ晴れてくれるわけもなく、カフェインたちは皆諦め、居眠りを始める。

遠くに行きたいと想う。
見たことがない景色。聴いたことがない音。嗅いだことがない香り。そういう知らない世界にエイヤと身を投げ、自分の輪郭をゆっくりと指でなぞる時間が、日々の中にはきっと必要だ。

地図アプリを開いて、適当なところにピンを刺す。
寝間着の上からコートを羽織り、鍵、スマホ、煙草、財布をポケットにつっこみ、玄関を出る。

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