メガネのキズ

メガネが曇っている。
連絡は、まだ無い。

メガネ拭きで汚れを拭い、蛍光灯の明かりにメガネをかざすと、
元々レンズについていた小さなキズが、ちらちらと光って見えた。

きっとこの小さなキズは、何度もメガネを拭くことでついた傷だろう。
「もしかして……」と思い、拭きたてのメガネを再度掛けてみるも、メガネ越しに見える景色にはなんの問題も無い。このキズを知覚するにはあまりに目に近すぎて、ピントが合わず気づくことができないだけなのかもしれない。

この瞬間、地球の反対側の人たちの中にも、今の僕と同じようにメガネを拭いている人がいるのではないかと、そんな気がして反対側に何の都市があるのか調べてみた。小学校の頃に、日本の下にまっすぐ穴を掘っていくとやがてブラジルにたどり着くとよく言っていたが、実際に調べてみるとブラジル・ウルグアイ国境付近の、都市も人の気配も何もない海の上だった。

これではメガネを拭いている人なんているはずもないな、と小さく落胆し、またメガネを明かりにかざしてみる。変わらずキズは僕の目に輝いて映った。表面の汚れを拭うことに夢中だった僕は、小さなキズがついていたなんてこれっぽっちも気づきもしなかった。

もし、もっと早くに気がついていたら、拭き方を変えていただろうか。



さて、ここまでの「メガネ」と「キズ」は比喩表現ですので、好きに解釈を変えてお楽しみいただければと思います。

在宅暇太郎の余興にお付き合いいただき、ありがとうございました。