乾泉

池なのに水が無い。枯れたわけではなく最初から意図して水が張られていないこの池に「乾泉」と名をつけ楽しむ亭主の感性に静かな感動を覚えた。その後色々と調べてみると、日本庭園における造園方法の一つに「枯池(かれいけ)」というものがあることを知った。水を用いず、白砂や小石などを敷き詰めることで水を表現した池。素敵だなあと思う。無いものを欲するのではなく、在るものについて、その見方を変えることで美しさを見出す審美眼。きっと今も昔もドラマチックな光景なんてものはなくて、ただそこにある凡な風景に対し、一所懸命に美しさや機微を見出す鍛錬を積んでいたんだと思う。美しいと感じるその心が美しいというのは、きっとそういうことなんだろう。

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