4.37km

遠くからやってきた。誰も知らない地平線の向こうから。冷蔵庫には食べかけの惣菜と、賞味期限の切れた牛乳がしまってある。3日ぶりに髭を剃る。剃り方をすっかり忘れてしまった手が、危ない足取りで頬をなぞる。血がにじむ。熱いシャワーが傷口にしみる。地点Aと地点Bの間を行ったり来たりするうちに、自分が何者なのか分からなくなった。地点Aから地点Bに向かうたび、心が痛む。地点Bから地点Aに向かうたび、涙が頬を伝う。玄関のチャイムが鳴り、磨りガラスの引き戸越しに、小学3年生の友人が僕の名前を呼んでいる。ずいぶん遠くへとやってきた。皆と別れた地平線の向こうから。

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