1月某日

1月某日
取引先の人にラーメン二郎について熱く語られてからというもの、ずっと頭の片隅にラーメン二郎がいる。東京出張の際はぜひ一緒にということになったので、セブンイレブンの二郎系ラーメンを2つ購入して予行練習をした。なるほど、チャーシューを最後に残すとなかなかにしんどい。

1月某日
不意に「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」を観に行こうと思い立ち、ネットで予約をいれる。微妙に上映まで時間があるので、通り道にある二郎インスパイア系のお店である「麺屋 神やぐら」に立ち寄る。普段からラーメンを食べに行く習慣がなく、思っていた以上にお客さんが並んでいたことに対して面食らう。麺屋で面食らう。上映開始まであと20分というところでやっとカウンターに通される。いろいろヤバい。ここから映画館まで車で10分なので、残された時間は10分。カウンターに座って5分後にラーメンが提供される。あと5分。一心不乱にもやしと麺をかき混ぜながら口に放り込む。横に座っている男性はスマホをテーブルに置き、空いている手で器用にソシャゲの日課をこなしながらラーメンを啜っている。小さい頃からごはんを残すことを固く禁じられて育ったので、スープに浮かぶ背脂まで入念に掬い取って食べた。ジャスト5分。「ごちそうさまでした」と一言添え、急いでお店を出る。いつのまにか店内のお客もまばらになっていた。外は生憎の雨、というよりここのところずっと雨。幸いにも道は混んでいなかった。映画館に入り、発券端末に番号を入力してチケットを受け取り、4番シアターへと向かう。ちょうど開場されたばかりのようだった。ギリギリセーフ。さて、肝心の「機動戦士Gundam GQuuuuuuX」はどうだったか。これについてこの場で語れることはとても少なく、ただ一言「今の時代にこの作品を劇場で見れてよかったなあ…」と、しみじみ噛み締めながら帰路についたということだけをここに記したい。

1月某日
打ち合わせ終わりに、打ち合わせ相手に「そのパンツいいね」とDickesのワークパンツを褒められる。「いい大人(a.k.a おっさん)になったらカーゴパンツを履いてはいけないって、SNSで見かけた」とその人は言っていた。そうか、だめなのかあなんてちょっと思ったりしたけど、気に入っているのできっと履き続ける。価値観は時代や時代に足並みを揃える流行によって変化していくし、あの頃は良しとされていたことでも、いまでは悪しとされることが本当にたくさんある。あの頃は悪しとされていたけど、いまは良しとされていることってあるっけなあと考えてみたけど、一つも思い浮かばなかった。

価値観のギャップを感じるとき、いつもきまってこの映像のことを思い出す。価値観の良し悪しというのは決まって今この瞬間の価値観に従って裁きを下すもので、それは未来をより良いものにしていくためには必要な取り組みだとは思う。けれど、過去の時代に生きた人たちの価値観までを否定し、無きものするというのは、ちょっと違うんじゃないかと。皆だれしもその時の価値観を信じ、いまを、未来を良くするために生きていたはずで、恐らく今に生きる我々の価値観のいくつかも、きっと未来の人たちから見ると滑稽に映るだろう。だから、この映像が一貫して描いている、どの時代に生きている人たちをもそっと優しく包み込むような感じがとても気持ちが良い。

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