いのちのおもさ

道具を一つ一つ手に取り、秤のうえにのせて重さを量る。UL(ウルトラライト)を志向する人にとってはごく当たり前の光景だ。前回道具の計量をしてから随分と年月が経ち、その間に道具の顔ぶれも随分と変わったので、このお休みの間に腰を据えて量り直そうと決心したのだった。念の為、前回量った道具についても再計量を行う。何度量っても15グラム増えていた。思わず「太ったなぁ!」と声が出たが、そんなはずはない。随分と愛用しているダウンシェラフだから、魂でも宿りかけているんだろうか。魂の重さ、21グラム。

* * *

前の職場でプランナーとして働き、深夜残業が常態化していたある晩のこと。仕事を終え、契約している駐車場に車を停めたのが深夜の2時だった。夏も終わり、外は少し肌寒くなり始めていた。明かりもまばらな夜道をトボトボと歩きながらアパートへと帰っていると、スーツを着た男性が道の真ん中で街灯に照らされながら、うつ伏せで倒れていた。目を疑った。見間違いじゃないかと、歩みを止め、目を凝らして何度も男性を見た。男性は少しも動く気配がなく、声も聞こえない。死んでいるかもしれないと思った。走って男性に駆け寄り、肩を軽く叩いた。「大丈夫ですか?」と声をかけたが返事はない。男性を抱きかかえて仰向けにすると、すやすやと寝息が聞こえてきた。そして何より酒臭い。今日は金曜日だった。全てに合点がいき、僕の心臓が元気に脈打つのが耳の中で聞こえた。それからなんとか男性を起こし、肩を組んで家まで送っていった。思いのほか近所に住んでいる人だった。道中何を喋っているのか全然分からず、ろれつが全く回っていなかったが、アパートの玄関のチャイムを鳴らし、パートナーと思われる女性がパジャマ姿で出てきて、男性が散々怒られている時、「ごめんなさい…」と小さく呟いたのだけは、はっきりと聞き取れた。

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